販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

カナダ『リティネレール』販売者 リンダ・ペレティア

虐待を受けていた幼少期、自分を醜いと思っていた書くことで苦しみを外に出し、「今の自分は美しい」

カナダ『リティネレール』販売者 リンダ・ペレティア

64歳になったリンダ・ペレティアにとって、自分の子ども時代を一言で表す言葉は「恐怖」だという。父親に初めて殴られたのは4歳か5歳の時。罵倒する言葉を聞くのも彼女の日常だった。
10歳の時、母親は家族を残して家を出て行った。父親を毎晩抱きしめ「大好き」と言うようにと、母はリンダに言い残した。だが、毎日自分を殴る人を好きにはなれず、リンダは自責の念を募らせ、自尊心を持てないという問題を抱えながら孤立する日々を過ごす。「当時は、自分のことを本当に醜いと思っていました。何から何まで自分が嫌いでした」とリンダ。
幼少期の過酷な記憶を押し込めておくために、思春期は「山のような薬物」を摂取したという。精神疾患が初めて現れたのは25歳の時で、病による行動で刑務所へ送られた後、精神病院での生活となった。それから数年は深い「うつ状態」に陥り、何度か自殺未遂も繰り返した。
その後、なんとか父親との関係を断ち切ったリンダは、2006年から『リティネレール』の販売を始める。今ではグループセラピーで過去の経験を話したり、誌面でエッセイを書くまでになった。「書くことによって自分の苦しみを、ユーモアを交えて外に出せるんです。まるで真っ暗闇から抜け出すように」とリンダは語る。17年に『リティネレール』の25周年を記念して発行された、販売者のベストエッセイ100を収めた作品集『Sentinelles』にはリンダの作品二つが収められた。その中のひとつを紹介したい。

【自分と向き合って】
リティネレールに寄稿させていただくのは光栄です、本当に素晴らしい雑誌だから。この雑誌は、路上で何年も暮らすとはどういうことなのか、人々に伝える機会を与えてくれます。娼婦であることの苦しみ、薬物依存の大変さを打ち明ける人もいます。そして私のように、子ども時代に受けた虐待や暴力、屈辱について書く人もいるでしょう。私たちは次第に立ち直っていきますが、それには多くの内なる作業を伴います。
たとえば、私は現在64歳ですが、今もカウンセラーに毎週会っています。このサポートをいつか受けなくなる時が来ると思うだけで頭が真っ白になります。それはパラシュートなしで空中に飛び降りるようなもの。私は自分に自信がまったくなく、カウンセラーの方によくこう尋ねます。「私の言動は問題ないですか?」と。こういう自分にはとても疲れる。私は自分のしたことが正しいかどうかを常に心配しているのです。カウンセラーは「完璧じゃなくていい」「間違えたって大丈夫」などと書かれたリストまで作ってくれて、こうしたフレーズには本当に助けられています。このような雑誌で自分の経験を伝えることができる私たち販売者は、とても幸運です。

こう記すリンダは、自分を“リティネレールの美しき羽たち”の一人だと呼ぶ。「歳とともに知性と気品を身につけられている気がするのです。64歳になってやっとわかるなんて残念なことですが、私は今の自分を美しいと思っています」。リンダはもう、自傷行為をしなくなった。

(Christine Barbeau, L'Itinéraire / INSP / 編集部)

(人物キャプション)
Photo: Milton Fernandes

(本キャプション)
販売者のエッセイ集『Sentinelles』

『リティネレール(L'Itinéraire)』 
●1冊の値段/3カナダドル、そのうち半分が販売者の収入に。
●販売回数/月2回刊 ●販売場所/ケベック州モントリオール

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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