販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

『アプロポ』販売者  イオネラ・タマス

ドイツ語を習得したら、子どもたちを呼び寄せたい
ここには、私をハグしてくれるお客さんがいるから

『アプロポ』販売者  イオネラ・タマス

ドイツ語を片言しか話せない26歳のイオネラは、彼女の身の上をほとんど母語のルーマニア語で話してくれた。故郷は、今いるザルツブルクから1255kmほども離れたルーマニア。住民の数が年々減りつつある、ピテシュティ市近郊の南部の村で生まれ育った。彼女が想いを寄せるのは、その地に住む3人の子どもたちのことだ。
 将来、警察官になるのが夢だという8歳の長男、そして5歳になる幼稚園児の双子の兄弟。息子たちについて話し始めた途端、イオネラの目から涙がこぼれた。「今度はいつ帰るの?」と尋ねると、手元を見つめながら彼女はそっと答える。「できることなら、今すぐにでも」と。
 イオネラが生きる糧を求め、オーストリアへたびたび通い始めてからもう4年になる。2020年の厳冬に味わったおぞましい経験を振り返りながら、それまで笑みを浮かべていた彼女の表情もこわばっていた。当時はちょうどコロナ禍で、緊急シェルターも閉鎖さ...

続きは、本誌をご覧ください

『Apropos』
1冊の値段/3ユーロ(そのうちの半分が販売者の収入に)
発行頻度/月刊
販売場所/ザルツブルク

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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