販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

米国『スピークアップ』誌販売者、 エドワード・スモールズ

「アップタウンはひどいことになっていた」 ストリート誌販売者が目撃した、シャーロットの街の抗議デモ

米国『スピークアップ』誌販売者、 エドワード・スモールズ

 エドワード・スモールズは、ノースカロライナ州シャーロットのアップタウンで、ストリート誌『スピークアップ』の販売をしている。そのため、9月20日に起きた警官によるキース・ラモント・スコット射殺事件に対し、21日に勃発した抗議デモの震源地に居合わせた。スコット氏の妻は夫が丸腰だったと訴え、警察は彼が銃を所持していたと主張するが、真相はいまだに判明していない。
 重体一人を含む多くのけが人を出し、警官16人も負傷した激しい抗議デモの夜が明けた22日朝、スモールズは『スピークアップ』の編集者に自分が目撃したことを語った。
――昨夜は何があったのですか。
「アップタウンはひどいことになっていた。私は販売の仕事を終え、図書館近くの公園に座って本を読んでいた。すると人が走ってきて、誰かが撃たれたと言ったんだ。私は、何が起こっているのかを確かめようと、ライトレール(路面電車)に飛び乗った。トレード通りでは、人々が警官隊に向かってわめき、物を投げ、叫んでいた。突然、催涙ガスの匂いがしたので、急いでその場を去った。目や鼻やそこら中をガスにやられたよ」
 騒動の場所は、スモールズがいつも雑誌を販売しているトライオン通りの交差点からわずか6ブロックしか離れていなかった。
「私が仕事をしていた昼の間は、何も起こらなかった。晩の9時頃までは、みな平和的に抗議していたが、深夜になって暴力的になり始めた。馬鹿げたことをしていたのは、主に若い連中だ。そこら中を人々が走り回り、物を投げ、略奪やあらゆることをやっていた」
 彼の販売場所は、シャーロットで最も人通りの多い界隈で、多くの警察官も通りかかると言う。「警官たちは、コーヒーショップへ行く途中で、毎日私に声をかけてくれる。みんなこう言うよ。『スモールズさんおはよう。今日は元気かい』と。私は『おはよう、お巡りさん。今日もいい一日を』と言う。悪い感情なんて何もないよ」
――銃所持は合法であるべきか非合法化するべきか、どう思いますか。
「難しい問題だ。もし誰かが家に押し入って来た時、手元に銃があればきっと心丈夫だろう。しかし、誰かに対して腹が立ったからといって銃で殺すなんてことはしてはいけない。銃は危険な道具だ。銃を持ちたい人は持つべきだとは思うが、頭を使うべきだよ」
――銃を所持したことは?
「昔、チャールストン北部に住んでいた頃は、いくつも銃を持っていた。そこは小さな町で、暴力沙汰などまったくなく、自衛のための武器など必要なかった。私は狩猟のために持っていたんだ。シャーロットへ来てからは持ったことはないが、全然問題ない。必要がないからね。人を殺したくはない。身内を亡くしたことがあるから、それがどんな気持ちかは知っている」
 スモールズは4年前、当時36歳だった息子を銃による事件で亡くしている。
「理由はわからないんだ。息子は誰とでも一緒に外出するのが好きだった。私の知るかぎり、いい奴だったよ。きっと息子と犯人との間で何か誤解があったのだろう。司法は誰が息子を殺したのか、なぜ殺したのかを突き止められなかった。私は自分が間違った誰かを殺す前に、チャールストンを離れたんだ」
 今、『スピークアップ』でのスモールズは、その場を明るくするムードメーカー的存在だ。
「私は『スピークアップ』が大好きだ。つらい時に助けてくれた。だから、たとえ新たな職を得られたとしても、雑誌の販売は続けたい。苦しい思いをしている人に、私は『スピークアップ』の販売を勧めるよ」

(Matt Shaw/Courtesy of Speak Up / INSP.ngo)
Photos: Speak Up

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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