販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
『ビッグイシュー・オーストラリア』販売者 ケイラ
8歳の時に脳腫瘍を摘出、車椅子生活に。販売者として人目に触れることで、車椅子の大変さに関心を持ってもらえる
『ビッグイシュー』のことは学校での授業を通じて知り、「これはきっと素晴らしい取り組みにちがいない」と思いました。卒業後にビッグイシュー本部に連絡をとると、私も販売者になれると言われたんです(※)。「私にもお金をもらえる仕事ができるなんて!」とすごくワクワクして、すぐに始めました。学校を出てから初めて就いた仕事です。
私が住むシドニーの街、サザランド・シャイアはとても快適なところで、私はミランダ駅のあたりで販売しています。素敵でおもしろい人たちにたくさん出会い、仕事はとてもうまくいっていると思います。雑誌を売る時にいつもそばにいてくれる、販売支援者のナタリーにも感謝しています。
家族もすごく支えてくれていて、私が自活している姿を見て喜び「やりたいことは何でもやりなさい」といつも言ってくれる。将来の夢は、ハリウッドで監督になること。テレビに関連することはなんでも大好きなんです! ラッキーなことに、これまで俳優のザック・エフロンやニコール・キッドマンなど、たくさんの有名人にもお会いしました。
私は8歳の時に脳腫瘍が見つかり、摘出手術を受けました。そして術後のある日、映画を観に行って映画館から出ようとしたら、身体がまったく動かず、呼吸さえままならなくなったんです。その後474日間入院し、身体の機能の一部は時間をかけて回復しましたが、それ以来、毎日車椅子が必要な生活となりました。
学校生活はとても大変でしたね。クラスメートとの間に距離ができ、孤立しているように感じていました。校長先生に会いに行って何とか助けてもらおうとしましたが、事態はほとんど変わりませんでした。なので今度は、学校内にいる車椅子利用者の代表として、自分たちが経験している苦労を先生や他の生徒たちに理解してもらおうと訴えかけました。わかってもらうのは簡単なことではないのですが、私が伝えたことから何か少しでも学んだ人がいたらいいなと思います。
でも、最近は車椅子生活の大変さに関心を持っている人が増えているので、状況はよくなりつつあると思います。外に出てビッグイシューを販売するのも一助になっているのではないでしょうか。私が外で人目に触れることで、関心をもってもらえるからです。
今、私は18歳になり、成人サイズの車椅子が必要になりました。新しい車椅子になれば何をするにももっと楽になりますが、入手できるまでにあと1年ぐらいかかるかもしれません。今の車椅子は時々、突然動かなくなってしまうことがあるんです。そうなると一日中家にいなければならず、外出してやりたいと思っていたことができなくなってしまいます。
私は、ビッグイシューが人々の意識を高めるために行っているこの事業が大好きです。単に収入を得るための手段ではなく、あらゆる社会的な側面をもっています。最近は職業訓練専門学校で社会貢献について学び始め、卒業したらチャリティの仕事に携わりたいと思っていますが、ビッグイシューの販売は絶対にやめたくありません。パートタイムとして続けられたらと思っています。
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
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