販売者に会いにゆく (旧・今月の人)

イギリス『ビッグイシュー英国版』販売者 マーティン・マケンジー

都市封鎖中、地元の人の買い出しを手助け
「僕にとって彼らは家族のようなもの」

イギリス『ビッグイシュー英国版』販売者 マーティン・マケンジー

 昨年、11月初旬から約4週間にわたり2回目の都市封鎖が行われた英イングランド。『ビッグイシュー英国版』販売者のマーティン・マケンジーは、都市封鎖直前まで販売場所に立ち続けた。「いつも以上に雑誌は売れていたよ。お客さんたちもみな『こんな状況だから』と考慮してくれたんじゃないかな。でも、また都市封鎖……。努力すれば必ず報われると信じてきたけれど、正直『また収入が途絶えてしまう』と思った」
「1回目の都市封鎖の時はフードバンクや(スーパーで使う)買い物券に頼ったりしながらなんとか凌げたよ。地方議会が50ポンドの買い物券を支給してくれたから、必要なものを買うことができたんだ」と話すマケンジー。「栄養摂取のために、残り物でも何でも口にしていた」
 彼は2度目の都市封鎖を予想できたと振り返る。「感染者数を減らさないといけない時期なんだけど、人々の日常を観察していると、都市封鎖になるのもうなずけた。だって『あぁ気分悪いな、昨日パーティに行ったせいだ』なんて(街中で)よく聞いていたから」
「心が痛むよね。日々気をつけているのに、都市封鎖の高い代償を払わないといけないんだから。僕は人と交流するのが好きだから、一人でずっといなければならないのはつらい」
 でも、それほど打ちのめされているわけではないという。これまでももっとひどい状況があったし、今は多くの知り合いができたからだ。都市封鎖の際にも連絡が取れるようにと、多くのお客さんが彼に電話番号を教えてくれた。
 また、マケンジーは自転車修理の技術を生かして、出張修理の仕事をロンドン市内で営んでもいる。ビッグイシューの誌面でその才能を披露してから、依頼が舞い込んだのだ。「そのお客さんたちからも『自転車に何かあったら、また頼むね』って言われているしね」
「12月1日に、僕は40歳になった。普段は誕生日なんて気にしないんだけど、40歳といえば節目の年だ。40年間も生き残って、さらに強くなっているというのは、祝うべきことだと思う」
 時には落ち込むこともあるが、それでアルコールや薬物に手を出すことはないと言う。「いつも忙しくしておくのが、うまくいく秘訣だね」とマケンジー。「最近は地元の人たちを助けることにも精を出しているよ。前回の都市封鎖中にも、高齢だったりして外出できない人のために買い出しを手伝ったりしていたんだ。2回目の時も、さらに二人から手伝いを頼まれた。僕は彼らの子どもたちとも知り合いだから、信頼して頼んでくれたんだと思う。僕にとって彼らは家族のようなもの。そう、それ以外の言葉は見つからないな」

Text:Sarah Reid, The Big Issue UK

(雑誌情報)
『ビッグイシュー英国版』 
1冊の値段/3ユーロ(そのうち1.5ユーロが販売者の収入に)
発行頻度/週刊
販売場所/北アイルランドを除く英国各都市

(写真キャプション&クレジット)
ロンドン中心部、ストラウド・グリーン通りで販売するマケンジー
Photos: Orlando Gili

※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。

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