販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
スイス『サプライズ』販売者 ジナブ・アーメッド
13年前、母国ソマリアの内戦中にボートで欧州へ。
ドイツ語の勉強を続けて、医療事務の仕事に就きたい
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もう2年ほど、スイス北部アルレスハイムにあるスーパー「ミグロ」前で『サプライズ』を販売しています。週に2、3回でしょうか。というのも、まだ生後13ヵ月の娘がいるので、夫が面倒を見てくれる時しか外出できないんです。それでも、すでに何人かお得意さんができました。
ある日のこと、そんなお得意さんの一人が「雑誌を販売していない時は何をしているの?」と聞いてきました。「ドイツ語のクラスを受けています」と答えたのですが、実は次の回の授業料を支払うことができていませんでした。そう話すと、その女性は「授業料に」と寄付をくださり、とてもうれしかったです。
ソマリア出身の私は、2008年8月3日からスイスで暮らしています。アフリカ大陸からはまずイタリアへボートでたどり着きましたが、渡航は決して楽ではありませんでした。イタリアでの2、3ヵ月は過酷な生活で、路上で寝ることも何度かありました。恐怖の連続でしたが...
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Text:Eva Mell, Surprise
(キャプション)
バーゼル近郊の町アルレスハイムで販売するジナブ・アーメッド(31歳)
Photo: Klaus Petrus
(雑誌情報)
1冊の値段/6スイスフラン(そのうち2.7スイスフランが販売者の収入に)
発行頻度/月2回
販売場所/バーゼル、ベルン、チューリッヒなど
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
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416 号(2021/10/01発売)
特集貧困緊急事態 ――コロナ禍の1年半に
スペシャルインタビュー:ダニエル・クレイグ