販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
『フェデル・ネルクル』販売者 セラード・アルセルビッツ
社会の間にある溝を埋めたい
雑誌に付けられる本当の値段はありません
『フェデル・ネルクル』と出合ったのはもう19年も前のことです。路上をさまよい歩いていて路面電車に乗ったら、年老いたホームレスの男性が私に近づいてきて、手に持っている雑誌を見せてくれたんです。これは良さそうだぞ、やってみようかと自分に問いかけました。路上生活をして2年が過ぎていました。
実はこの雑誌をこっそり盗んだこともあったんです。それでも販売者として受け入れてくれて、ついには優秀販売者として何度か表彰もしてくれました。賞をもらうのはいつも気分が良いものです。私は長らく営業職で働いていましたから、良い商品への嗅覚を持っています。
今でも登録上はホームレスのままですが、それは家の所有者になれないというだけです。路上生活からは脱し、手狭ではありますが、かわいい妻とアパートの8階に住んでいます。でも日々の状況は厳しさを増してきましたね。戦争にインフレ、それにコロナ禍。現代文明は過酷すぎます。...
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
454 号(2023/05/01発売)
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