販売者に会いにゆく (旧・今月の人)
『ビッグイシュー台湾版』販売者 ダイ・ジアリー
父の死で、一度は失った生きる希望
多くの人の助けで、1分1分を生きのびてきた
「父が車の事故で亡くなって、ほどなくして私も失職して……。悪夢のような日々が続きました」
ダイ・ジアリーはそう語り始めた。「父は私にとって錨のような存在だったのです。他界してしまうと、私はただ見知らぬ場所を漂流しているような気持ちになりました」
悲しみに包まれると、若年性認知症の症状も出始めた。「心は動いているのですが、言葉が容易に出てこないのです。その時はお風呂に入らない日も何日も続きましたね。本当なら気持ち悪くて仕方ないでしょうが、次第にそのような状況に慣れていきました」。大切な人を失うと一夜にして地獄の淵に立たされることを学んだという。
「子どももいませんし、一人で暮らしていました。当時はこの世からいなくなっても誰にも気づかれないということがやすらぎでした」
「でもある日、友人が訪ねてきてホームレス台湾協会のポンポンシャワーハウスにある銭湯へ行こうって誘われたのです」
初めは...
※掲載内容は取材当時のもののため、現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている BIG ISSUE
473 号(2024/02/15発売)
特集生きもの道、生きものの巣
スペシャルインタビュー:ボーイジーニアス
リレーインタビュー:上村愛子さん